破産手続の流れ

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1 破産手続の概要

 これから、破産手続開始申立の基本的な手続きの流れを説明します。
 破産手続開始申立は、免責許可申立を同時に行うことで、主として、免責とならない一定の債務を除き、債務の免責許可を受けることを目的とするものです。なお、免責の対象とならない債務としては、以下のものがありますので、ご留意ください。

 一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
 二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
 三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
 四 次に掲げる義務に係る請求権
  イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
  ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
  ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
  ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
  ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
 五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
 六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
 七 罰金等の請求権

2 同時廃止と管財事件について

 同時廃止とは、破産手続の開始と同時に廃止されるもので、管財人も選任されないことから、簡易迅速な処理となります(準備から免責許可まで3か月程度必要です。)。通常、個人の自己破産では、この同時廃止手続を念頭に準備を進めることになります。

 一方、管財事件は、裁判所において申立人の財産調査等が必要と判断した場合に、破産管財人(弁護士)が選任され、調査を行うことになります。管財事件となると、手続も長期化しますし、管財人の報酬に充てるため予納金の納付も必要となり(最低でも20万5000円)、費用面でも負担が大きくなります。

 大阪地裁では、以下のような場合、原則として破産管財事件となります。
 ・現金と普通預金の合計額が50万円を超える場合
 ・預貯金(普通預金を除く)、保険解約返戻金、積立金等、賃借保証金・敷金返戻金、貸付金・求償金等、退職金、不動産、自動車、動産(貴金属、電器製品等)、有価証券等、近日中に取得が見込まれる財産、過払金、のいずれかの項目で項目ごとの実質的価値の合計が20万円以上となる場合

 資産状況が破産管財事件に該当しうる場合でも、申立前の調整で同時廃止として申立可能な場合もありますので、ご相談願います。

 なお、個人事業者であったり、法人代表者の方で法人の連帯保証人をされている方(通常、法人と一緒に破産申立します。)の場合は、原則、管財事件となります。

3 事前準備について

初回相談

初回相談では、破産手続の概要や準備いただく内容について説明します。費用は、法テラス利用で、同時廃止の場合ですと17万円程度となります。法テラスには、事件終了までの支払猶予制度と、事件終了後の免除申請制度がありますので、生活保護受給者や生活困窮者として一定の要件を満たす方は、実質的に費用の負担がなく破産手続を依頼することができます。経験上、破産申立される人のうち100%近い方が法テラスを利用し、生活保護受給者の方も半分以上いらっしゃいます。

 ご存知かもしれませんが、生活保護受給中に借金の返済を行うことはできませんので、行政から指導を受けて相談を受けられる方も多くあります。現在、そういったご不安がある場合にもご相談ください。

 初回相談時に依頼を受けた場合、費用面の説明をさせていただいたのち、委任状を作成いただき、受任通知を債権者宛に発送します。受任通知後は、原則、債権者から本人へ連絡が入ることはなくなりますので、ご安心ください。

 なお、法テラスの場合は、委任契約書の締結の前に、審査がありますので、委任契約締結まで2週間程度必要になります。

(初回相談時に必要なもの)

 ・債権者の連絡先や残高のわかる通知書など

 ・印鑑

 法テラスの利用を希望される方は、以下の書類も持参ください。

 ・住民票(発行3か月以内、個人番号以外の情報の省略がないもの)

 ・生活保護者:生活保護受給証明書

 ・給与生活者:給与(直近2か月分)・賞与(直近)明細、源泉徴収票(直近)

 ・自営業者:確定申告書(直近1年分)、課税証明書又は非課税証明書(直近)

 ・年金受給者:年金振込通知書(直近)、 年金支払通知書(直近)

 ・無職:非課税(所得)証明書(直近)、雇用保険受給証明書、離職票、解雇通知 

  ※給与所得者、自営業者、年金受給者、無職の資料はいずれかの一点

申立の準備

 続いて、破産手続開始申立の準備について説明します。以下の書類を用意する必要があります。

・戸籍謄本(発行3か月以内、申立時に提出しないのですが用意はしておく)

・住民票(発行3か月以内、個人番号以外の情報の省略がないもの)

・預金通帳(過去1年分の履歴、一括記帳があると取引明細必要)

 ⇒公共料金の履歴がない場合、領収証等が必要

・保険証券(解約返戻金の照会が必要)

・賃貸借契約書

・退職金に関する書類(勤続5年以上)

・不動産登記全部事項証明書、固定資産評価証明書(不動産があるとき)

・車検証、査定書(原則、普通車は登録7年で無価値の評価)

・所得証明書(課税証明書、源泉徴収票等、生活保護者も取得必要)

・生活保護受給証明書(生活保護受給者の場合)

・年金受給証明書(年金受給者の場合)

・失業保険受給証明書(失業保険受給者の場合)

・確定申告書(直近2年分、個人事業者の場合)

・診断書(病気が破産原因または療養中)

 少なくとも過去一年分の通帳履歴を確認します。高額な出金履歴や、債権者への弁済以外の支払い等があると、内容を確認することになります。

 このほか、申立前2か月間の家計収支表を作成してもらったり、家族関係や職歴などを整理いただいたり、破産に至る経緯について確認する必要があります。

 この準備期間を利用して、債権者に対し、債権調査を行い現在の債権残高や貸付履歴などの開示を受けます。通常、受任通知と合わせて、債権調査の依頼をします。

免責不許可事由について

 免責不許可事由のうちで、よく問題とされるものを挙げておきます。免責不許可事由とされるものですが、裁判所に対しては、免責不許可事由に該当しない、もしくは、該当するとしても裁量免責に該当する旨の補足を行います。

一 浪費(むだづかい)やギャンブルによって借金をしてしまった場合

二 財産を隠したり,壊したり,勝手に他人に贈与したりした場合

三 破産申立てをする前の1年間に,住所,氏名,年齢,年収等の経済的な信用に関わる情報について嘘をついた上で,お金を借りたり,クレジットカードで買物をしたりしたような場合

四 ローンやクレジットカードで商品を買った上で,その商品を非常に安い値段で売ってお金に替えた場合

五 破産の申立てをした日から数えて7年以内に免責を受けたことがある場合

六 裁判所や破産管財人が行う調査に協力しなかった場合

 内容次第ではあるのですが、管財人の調査が必要と判断されれば管財事件へ移行しますし、移行しない場合でも、反省文の作成、家計収支報告の継続、生活再建の計画策定、裁判官の口頭審査(面談)など、対応する必要が生じることが多いです。

 このような事由がある場合、事前の準備も慎重に行う必要がありますので、隠すことなく教えていただくようお願いします(内緒にしてあとから裁判所に伝わると心証が悪く、免責を受けられなくなる可能性が高くなりますので注意ください。)。

 なお、免責不許可事由がない人の場合でも、免責を受けた後、どのように生活を再建するのか裁判所も関心を持っていますので、借金等をしないで生活を維持できることについて、補足することが必要です。生活保護受給者の方は、生活保護費で生活維持ができるのであればそれでよろしいのですが、受給者ではない方は、ご自身の収支バランスを考慮して、どのような生活をしていくべきか整理するようにお願いします。 

4 申立について

 準備いただいた書類をお渡しいただき、内容確認後、当職にて申立書一式を作成します。書類をいただく際に、当日の通帳の記帳をお願いしております。申立は、最終の記帳日から2週間以内にする必要があります。自由財産としては、99万円まで保有することが認められていますが、上述しましたように現金と普通預金の合計額が50万円を超えてしまうと、原則、管財事件となってしまいますので、給与などの入金で一時的に50万円を超えているような場合は、申立日を少し遅らせて預金を減らすなどの調整が必要となります。

5 破産手続開始決定(同時廃止)から免責について

 裁判所に申立書を提出後、一週間程度で(新型コロナの影響で時間を要する場合もあります。)審査結果が通知されます。不備などあれば、適時対応しますが、裁判所からの指示内容によっては、本人さんに作業をお願いする場合もありますのでご協力ください。

 問題がなければ、同時廃止となり、免責許可の判断が出るまでの間、債権者に対し免責に対する意見を求める申述期間(約2か月)となります。経験上、通常の金融機関、クレジットカード会社、消費者金融からこの期間に意見が出されることはあまりありませんが、クレジットカードを利用した現金化のような取引が散見される場合は、その事実だけを指摘するような意見を出されたことはあります。仮に、何かしらの意見が債権者から出された場合は、その意見に対する対応を求められますが、何もなければ、申述期間経過後、そのまま免責の判断がなされます。

 法テラスを利用された方は、免責決定後、事件終了となりますので、免除申請を希望されるのであればご自身で手続きを行うようにしてください。生活保護受給者であれば必要書類も少なく簡単な手続きのようですが、受給者でない場合でも一定要件を満たしており、免責決定から2か月以内であれば、破産申立書一式の控えを提出することで通常よりも簡易な手続きで申請が可能となっています(詳細は法テラスのサイトを参照ください)。

6 破産手続開始決定(同時廃止)から免責について

官報公告について

 破産手続開始決定と免責許可決定の2回、官報で氏名と住所を含め公告がなされます。一般の人が官報を定期的に購読していることは少ないと思われますが、まわりに「内緒」で手続きを進めたいと希望される方は、ご留意ください。

信用情報機関への登録について

 破産手続に入ると金融機関等の債権者からの情報提供により、信用情報機関の信用情報に事故情報が登録されます。信用情報機関には、株式会社シー・アイ・シー(主に信販会社系)、株式会社日本信用情報機構(主に貸金業系)、一般社団法人全国銀行協会(主に銀行・信用金庫系)が挙げられます。それぞれ信用情報の登録期間は5~10年程度となっており、その間、新しい借入れやクレジットカード作成等に制限がかかります。

職業制限について

 破産申立をすることで何か日常生活が制限を受けるということは上記以外にあまりないのですが、一定の職業の方には制限がかかります。

 一定の士業、一定の公職者、生命保険募集人、警備員、貸金業者など、復権(免責許可決定の確定または開始決定後10年経過)するまでの期間、就業できない職業があります。また、委任契約の当事者(例えば会社の取締役等)も破産手続開始決定が終了原因となっていますので、委任関係は終了します。なお、委任契約の場合は、復権しない期間でも再契約は可能です。

家族にも内緒で手続きをお考えの方へ

 基本的にはご家族から協力を得ていただくようお願いしています。やはり、生活再建を目指す手続ですので、今後の生活を見据えたうえで、ご家族の協力は不可欠だと思われるからです。裁判所へ提出しなければならない資料で、家族名義で手配してもらう必要がある場合もあるかもしれません(家族名義の通帳や保険など)。ただ、どうしても内緒でと希望される場合は、こちらからご家族に何か連絡することもありませんので、家族にも気づかれずに手続きを行うことも可能かもしれません(ただし、気づかれないという保証はできません。)。その場合、書類のやり取り(郵便物を含む)について何かしらの手当てが必要かと思います。

破産手続きの流れ

 以上、破産手続きの流れを説明しておりますが、スムースに進めば初回相談から免責を得るまで、約3か月程度の期間かと思います。

STEP 01

お問い合わせ

初回相談の日程調整を行います。

また、相談時に持参いただきたい資料の説明をお伝えします。

法テラス利用の希望の有無もお知らせください。

利用要件の詳細は、法テラスのサイトをご確認ください。

STEP 02

初回相談

手続の内容、手続に要する費用、準備いただく資料などについて、説明します。

ご了解いただいたところで、委任状と委任契約書の作成を行います。法テラス利用の場合は、委任契約書締結前に審査を要します。

ご不安なことやご不明なことは、このときにお伺いください。

STEP 03

相談(2回目)

初回相談の約1か月後に設定させていただいております。その間に申立に必要な資料の収集をお願いします。

初回相談後、当職においても債権者へ受任通知を送付し、債権調査を行います。

資料の不足がないか確認して、申立に必要な事項をお伺いしていきます。

STEP 04

破産手続開始申立

受領した資料に基づき、当職において申立書を作成します。

原則、2回目の相談日から2週間以内に申立を行います。

裁判所の審査な結果に従い、追加の資料を手配いただく場合もございます。

審査で問題がなければ、破産手続開始決定(同時廃止)がなされます。

STEP 05

免責許可決定

同時廃止後、約2か月間の免責に関する意見申述期間が経過しますと、免責の判断がなされます。

免責決定後、確定することにより、破産債権の支払い義務は免除されます。

債権者によっては、免責許可決定書の写しを送るよう依頼される場合があります(通常は代理人あてに依頼がありますのでこちらで送付します。)。

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